2尺3寸差しかけ傘の張替と修理

2尺3寸差しかけ傘の張替と修理が終わりました。

お客さんに見積書を提出したのが
平成27年10月19日で納品が平成28年3月28日でしたので
おおよそ5ヶ月お待たせしました。

神事や祭事で雨が降ると
この2尺3寸差しかけ傘が使われるそうですが
平成28年4月1日に執り行われた神事では
熊本地方の天気はぐずついた天気で雨のち曇りだったのですが
きっと無事に神事が執り行われたと思います。

よかった。

さて本題です。

2尺3寸差しかけ傘と書いていますが
実際は神職の方がご自身で使用される傘なので誰かに差しかける傘ではないのです。

どちらかと言えば番傘に近くて
神職の方が烏帽子や装束を身につけられるので
一般的な和傘より木柄が長くて傘の寸法が大きい和傘です。

最初に連絡があったのが平成26年11月10日で
お客さんのところへ打ち合わせに行ったのは平成27年7月15日でした。

最初に連絡があった日から納品までの期間を考えると1年5ヶ月間お待たせしたことになります。

打ち合わせのときには8本の傘が必要なので
お客さんが所有してある差しかけ傘の13本の中で再利用できる8本を
修理して張替えてほしいという依頼で
最初は新調も希望されてありましたが
新調するには予算の問題や部品の供給状態と納期の問題が発生したので
修理して張り替えるということになりました。

それでは、作業を公開します。

まずは点検と採寸。
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轆轤(ロクロ)の目数が54軒あり傘骨の長さは2尺3寸あって
持ち手が木柄になっていて一般的な和傘より大きく感じる和傘です。

現在の2尺3寸差しかけ傘のロクロの目数は50軒の骨数が主流なのですが
ヒトムカシ前の九州の傘屋さんでは
2尺3寸差しかけ傘のロクロの目数は54軒の骨数が主流だったようです。

和傘全盛の時代には産地によって様々な特色の材料が使われていたのがわかります。

預かった13本の傘なのですが
同じように見える2尺3寸差しかけ傘でも3種類の寸法の材料で製作してありました。
とても些細なことですが
ロクロの種類が3種類で大きさ(直径)が1分(3㎜)違っていたり
傘骨の寸法や和紙の張り方もさまざまな方法で製作された2尺3寸差しかけ傘でした。

3種類の寸法で製作された2尺3寸差しかけ傘について簡単な時代考察をします。

お客さんは13本の2尺3寸差しかけ傘を所有されたありましたが
傘を購入したのが3回あったと思います。
材料や製作方法、お客さんのお話、材料屋さんとの打ち合わせなどを含めて考察すると
60年前くらいに数本購入。
40年前くらいに数本購入。
20年前くらいに4本購入。
と、20年くらいの間隔で必要な本数に応じて数本ずつ買い足されたじゃないかと思います。

お客さんが所有されてある13本の2尺3寸差しかけ傘には
修理や張替の形跡は見当たりませんでした。

作業の進行についてはいろいろと悩みましたが
材料の供給がない壊れた部品については修理して
材料の供給のある壊れた部品については修理や交換をして作業を進めました。

3種類の傘があったので
それぞれの傘を1本ずつ残すことにして作業を開始。

既存の傘骨や木柄、それからロクロやハジキ(留め具)を点検して
材料の発注と壊れている箇所の修理をしました。

手元ロクロと木柄は磨きなおして
汚れていた箇所もきれいになり新品同様になりました。
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ハジキ(留め具)は新品に取り替えました。
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次に木綿糸を使ってロクロと傘骨を組み立てます。

傘骨やロクロに和紙が張ってあるところは傘骨やロクロを修理したところです。
傘骨やロクロは竹や木材を使って修理したあとに和紙で補強します。

糸が見えているところは傘を広げて和紙を張る前に傘骨を修理するところなので
ヒトメでわかるように目印で糸を結んでいます。

修理した場所がわかりますか?
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木綿糸を使ってロクロと傘骨を組み立てたら和紙を張っていきます。
今回は和紙の張り方を悩みました。

前述したように
パッと見た感じは
どの傘も同じ差しかけ傘なのですが
様々な大きさの材料で製作してあったり
大きな和紙を張り合わせている傘や
小さな和紙を何枚も張り合わせた傘があったのですが
今回の和紙を張る作業は段張(継張)という方法で作業をしました。
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この方法で和紙を張るのはとても手間がかかるのですが
この方法で和紙を張ると和紙の「ムダ」がとても少ないです。

このような方法で和紙を張る機会も少ないので
技術の向上と技術の保存を考慮して作業を進めました。

知識を持っていても
実際にやってみて経験しないと理解できませんし
見てるだけや知ってるだけでは現実は変わりません。

ごちゃごちゃとネット上で発言しても技術が向上することはありません。

技術が向上するならボクは何時間でもパソコンの前に座りますし
技術が向上するならボクは何時間でもスマートフォンの画面をいじっているのですが
そうじゃないみたいなので技術向上と保存のために段張(継張)という方法で和紙を張りました。

話が蛇足しましたので元に戻します。

和紙を張ったあとは
和紙の処理や塗装の準備をします。

和紙の処理や塗装の準備ができると
和紙に防水性の植物油を含ませて乾燥させます。
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天気のいい日に数日間天日干しをして防水油を乾燥させた後は
カシューという塗料を塗装して乾燥させます。

和傘の工程で一番時間がかかる乾燥という工程です。

木柄は石突がついていないので磨耗した状態だったので5mmくらい切って新品同様になりました。
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カシュー塗料が乾燥したら
最後の点検と袋に入れて納品の準備。
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完成はこんな感じです。
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最後に。
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この写真は前述したように資料と技術の保存として
お客さんにお返しした2尺3寸差しかけ傘なのですが
おおよそ50年〜60年前に製作された傘です。

ほとんどの和紙が破れている状態なのですが
軒(傘を開いた時の外側)と天ロクロ付近(傘を開いた時の上部)の和紙は
破れずに残っていました。
和紙が破れずに残る理由の昔の職人さんの技術と知恵は素晴らしいと思います。

All photograph is taken by Sony DSC-RX100.

傘屋 崇山 Kasaya Souzan では基本的に他店購入分の修理、張替は受付していません。
和傘の修理や張替等の相談はまずは購入された販売店へご相談ください。

購入した傘屋さんが廃業されていたり
思い入れのある和傘についてはお話をお聞きした後に
傘を見せていただき、診断した後に
見積もりを提案させていただき、修理や張替の受付をしています。

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